①と②の結果を元に、9つのタイプがわかります。例えば、負担が大きい環境でもストレスを感じない方もいます。そのような方はストレス耐性が強いタイプとなります。
ストレスに関する診断は、厚生労働省によるストレスチェック尺度[1]、心理的ストレス反応測定尺度(Stress Response Scale-18)尺度[2]などが代表的です。これらの尺度は、ストレス症状などを詳細に分析できる点で優れています。一方で、ストレスの原因となる負担の大きさそのものは測らないため、コーピングスキルの高さを測ることはできません。そこで、既存の尺度と差別化をはかり、様々な角度からストレスを診断するツールを作成することにしました。具体的には、ホームズによる社会的再適応評価尺度を中心に調査しました[3][4][5]。ホームズの尺度では、クリスマス、1万ドル以上の借金、教会活動の変化など、欧米の習慣や古い基準が組み込まれています。そこで尺度の作成にあたって、現代の基準、かつ日本人を対象とすることを意識して再編成しました。
それぞれの測定項目について、公認心理師、臨床心理士、心理学の大学院を卒業したものが中心となり、ブレーンストーミングを行いました。その後KJ法により、グルーピングを行い、検討を加えたうえで質問項目を精査しました。
●ストレス環境質問項目
公認心理師、臨床心理士、心理学の大学院を卒業したものが3人が中心となり、質問項目を作成し、概ねその平均値を重み付け得点としました。
- 配偶者の死 100
- 離婚 73
- 天災被害 70
- 夫婦別居 65
- 裁判 63
- 近親者の死 63
- 本人の怪我や病気 53
- 結婚 50
- 育児 50
- 妊娠 50
- 失業 47
- 夫婦の和解 45
- 退職・引退 45
- 不安定な家族関係 44
- 家族の健康の変化 44
- 貯金の減少 40
- 収入の減少 40
- 人間関係のトラブル 40
- 就職活動 40
- 性生活の困難 39
- 新しい家族の加入 39
- 長時間の労働 39
- 失恋 39
- 仕事上の失敗 39
- 親友の死 37
- 配置転換・転勤 35
- 孤独な生活 35
- 夫婦喧嘩 35
- 仕事上の過剰な責任 35
- まとまった借金 35
- 不安定な職種 35
- 仕事上の地位の変化 29
- 収入が上がらない 29
- 配偶者の就職・退職 29
- 不安定な雇用状況 28
- 進学・卒業 26
- 長期の婚活 24
- 個人的習慣の変更 22
- 個人的な成功 22
- 引越し 20
- 会話のない生活 20
- 社会活動の変化 20
- 長時間通勤 20
- 睡眠習慣の変化 20
- 運動不足 20
- 家族の数の変化 20
- 食生活の変化 20
- 不健康な食生活 20
- 相談相手が少ない 20
- 長期休暇 12
- ダイエット 12
- 禁煙・禁酒 12
- 新しい習い事への参加 12
- あてはまる ×100%
- ややあてはまる ×50%
- あてはまらない ×0%
- 高ストレス環境 240以上
- 中ストレス環境 150~239
- 低ストレス環境 149以下
●ストレス状態質問項目
先行研究を吟味し10の質問を作成しました。
- うまく物事が進んでいると思う
- 穏やかな生活を送っている
- 努力が実る環境だと感じる
- 自分自身で問題を解決できる
- イライラを抑えることができる
- 感情のコントロールができる
- 助けてくれる友達がいる
- 人間関係が充実している
- 睡眠が安定している
- 身体に疲れを感じない
- あてはまる 3点
- どちらでもない 6点
- あてはまらない 10点
- 高ストレス環境 80以上
- 中ストレス環境 60~79
- 低ストレス環境 59以下
当尺度では、以下の9のタイプを設定しています。タイトルについては協議の上決定しました。
- 高ストレス環境×高ストレス状態 頑張りすぎ型
- 高ストレス環境×中ストレス状態 処理上手型
- 高ストレス環境×低ストレス状態 タフマン型
- 中ストレス環境×高ストレス状態 溜め込み型
- 中ストレス環境×中ストレス状態 ふつう型
- 中ストレス環境×低ストレス状態 コーピング名人型
- 低ストレス環境×高ストレス状態 緊急事態型
- 低ストレス環境×中ストレス状態 要注意型
- 低ストレス環境×低ストレス状態 フリー型
診断結果について、それぞれのタイプごとに特徴や注意点を1,000文字前後で評価しました。文章については、先行研究や作成者の臨床経験を基に作成しました。
当診断は因子構造及び信頼性・妥当性をチェックしたものではありません。あくまで専門家としての検討を加えたものです。統計的な根拠が希薄で、研究に耐えられるレベルの尺度ではないことをご了承ください。
[1]15分でできる職場のストレスチェック - こころの耳 - 厚生労働省
[2]鈴木 伸一, 嶋田 洋徳, 三浦 正江, 片柳 弘司, 右馬埜 力也, 坂野 雄二 1997 新しい心理的ストレス反応尺度 (SRS-18) の開発と信頼性・妥当性の検討
[3]Holmes, T.H ,and Rahe, R.H. The Social Readjustment Rating Scale " Journal 0f Psychosomatic Research,1967,11,213‐ 218
[4]ホームズらの社会的再適応評価尺度(SRRS)の日本人における検討 八尋 華那雄 井上 眞人 野沢 由美佳 健康心理学研究 6(1), 18-32, 1993
[5]日本人一般に於ける 「社会的再適応評価尺度」 に関する研究 荒井康晴, 降矢英成, 浅野孝子, 川原律子, 葛西浩史 心身医学, 1991