マインドフルネスとは、禅や瞑想を起源とする概念で、「今この瞬間の自分の感情や思考・体験を、あるがままに観察すること」を意味します。マインドフルネス力がある方は、集中力が持続し、メンタルヘルスが良いことが分かっているため、臨床心理学や精神医学で近年注目されています。当診断では、5つの指標でマインドフルネス力を測ることができます。
マインドフルネスにおいては、自分の感情や思考に「気がつく」「観察する」という姿勢を大事にしてします。自己観察力はマインドフルネスの基礎的な部分となります。
私たちは、恐怖心や不安感を追い出そうとしてしまうものですが、マインドフルネスにおいてはこれを自然なことと受けとめ、うまく付き合っていくことを大事にしています。
ネガティブ感情に振り回されて我を失ってしまうことを「自動操縦状態」と言います。怒りや不安に巻き込まれると、感情に任せて誰かに怒鳴ってしまったり、過度に悲観的になって不安を増幅させてしまいます。
目的本位とは日本の心理療法家の古典的な考えで、感情や気分に流されず、やるべきことをやるという姿勢を意味します。いつも誘惑に負けてしまう…という方は注意が必要です。
マインドフルネスは、もともと仏教における瞑想実践に端を発し、1970年代にジョン・カバット・ジン博士によって西洋医学の領域に導入されました。カバット・ジンは、慢性疼痛やストレス関連疾患の治療にマインドフルネスを応用し、その効果を科学的に実証しました(Kabat-Zinn, 1990)。以降、マインドフルネスは精神衛生、ストレスマネジメント、創造性、集中力、人間関係、スポーツ、リーダーシップなど多岐にわたる分野で活用されています。
マインドフルネスの測定尺度として、以下の信頼性の高い研究が挙げられます。
・MAAS(Mindful Attention Awareness Scale)
Brown & Ryan(2003)によって開発され、現在の経験や気づきに対する注意力の個人差を測定します[1]。
・FFMQ(Five Facet Mindfulness Questionnaire)
Baerら(2006)が開発。観察・描写・意識的行動・判断停止・反応制御の5因子からマインドフルネスを多面的に評価します[2]。
・SFMS(状況特異的マインドフルネス尺度)
前川ら(2015)は、状況に応じたマインドフルネスの変動を測定する日本語尺度を開発し、対人関係や職場での有効性を示しました[3]。
・日本語版MAAS
藤野ら(2015)は、BrownらのMAASを翻訳・適用し、大学生・社会人を対象に妥当性と信頼性を検証しました[4]。
・日本語版FFMQ
杉浦ら(2012)は、FFMQを日本語化し、5因子構造の再現性と心理的特性との関連を示しました[5]。
これらの研究はいずれも重要ですが、日常生活で「実際の行動変容」につながるかどうかまでは測定できない点が課題とされてきました。そこで本診断では、森田療法の「目的本位」の考え方を取り入れました。
「目的本位」とは、気分や感情にとらわれず、自分が果たすべき目的に意識を向けて行動する姿勢を指します。不安や集中困難があっても、それを排除するのではなく、行動の目的に意識を戻すという視点です。この考え方は、マインドフルネスを「気づき」にとどめず、日常生活での行動に結びつける点で有効であると考えました。
公認心理師、臨床心理士、心理学の大学院を卒業したものが中心となり、ブレーンストーミングを行いました。その後KJ法により、グルーピングを行い、5のグループにまとめました。その後、検討を加えたうえで質問項目を精査しました。また比較的短時間で診断が終わり、結果を把握できるようにするため、それぞれ3つの項目を採用しました。
診断結果について、それぞれのタイプごとに特徴や注意点を1,000文字前後で評価しました。文章については、先行研究や作成者の臨床経験を基に作成しました。
当診断は因子構造及び信頼性・妥当性をチェックしたものではありません。あくまで専門家としての検討を加えたものです。統計的な根拠が希薄で、研究に耐えられるレベルの尺度ではないことをご了承ください。
[1] Brown, K. W., & Ryan, R. M. (2003). The benefits of being present: Mindfulness and its role in psychological well-being. Journal of Personality and Social Psychology, 84(4), 822–848.
[2] Baer, R. A., Smith, G. T., Hopkins, J., Krietemeyer, J., & Toney, L. (2006). Using self-report assessment methods to explore facets of mindfulness. Assessment, 13(1), 27–45
[3] 前川洋一・高橋泰城・山田知弘(2015).状況特異的マインドフルネス尺度(SFMS)の作成.心理学研究, 86(1), 10–20.
[4] 藤野智香・中川一郎・大谷尚(2015).日本語版MAASの妥当性の検討.マインドフルネス研究, 1, 1–10.
[5] 杉浦義典・中川一郎・安藤寿康(2012).日本語版FFMQの作成と信頼性・妥当性の検討.マインドフルネス研究, 0(1), 11–20.