当診断は、リーダシップ論としてはもっともベーシックな、PM理論を参考にしています。PM理論は社会心理学者の三隅二不二によって提唱された理論で、集団維持力と、課題達成力の2つの側面からリーダシップを分析していきます。シンプルでわかりやすいので、初心者向けの分析ツールとして活用ください。
集団維持力は、Maintenance functionとも言われます。チームの人間関係を良好に保つための能力を意味します。例えば、励ます力、共感力、雑談力、小まめな声掛けなどが挙げられます。
課題達成力は、Performance functionとも言われます。メンバーの力を引き出し、目標を達成する能力を意味します。例えば、手本を見せる力、業務量を調整する力、契約や納期を守ってもらう力などが挙げられます。
診断結果には、総合的な診断と、個別の診断を解説させて頂きました。それぞれ長所と対策も掲載させて頂いています。是非活かしてみてください
リーダーシップ研究においては、PM理論、SL理論、レヴィンのリーダーシップ類型、パスゴール理論など、複数のモデルや尺度が存在します。リーダーシップ力は、外部の状況・内部の状況によって、そのあり方は大きく異なるものです。そのため、1つの尺度で全体を網羅するには、因子数が増えすぎる懸念があります。そこで当診断では、初級のリーダーでも直感的に理解しやすい三隅(1967)[1]のPM理論をベースに尺度を作成することとしました。それぞれの結果については、対策や改善策を解説しました。また、PM理論はあくまで基礎的なリーダーシップ力なので、SL理論、パスゴール理論などのリーダーシップ論についての発展的な学習を促すことにしました。
先行研究を吟味したのち、現役経営者、公認心理師、心理学の大学院を卒業したものが中心となり、集団維持力、課題達成力について、ブレーンストーミングを行いました。その後、KJ法を使い、質問項目を精査しました。短時間で診断が終わり、結果を把握できるようにするため、それぞれ10の項目を採用しました。
- <集団維持力>
- *傾聴力
- メンバーの発言を肯定的に返す
- 悩みをしっかり傾聴している
- *ストローク力
- 自分から元気にあいさつをするほうだ
- こまめに感謝の気持ちを伝える
- *アサーティブ
- 気持ちを汲み取りながら指導をする
- 一方的ではなく議論しながら指導をする
- *社交的環境の構築
- 気軽に話せる機会を作っている
- 雰囲気が固くならないように配慮している
- *モチベーションへの配慮
- メンバーのやる気を絶えず気に掛ける
- 仕事の意義を伝え意欲を維持してもらう
- <課題達成力>
- *仕事の難易度
- 能力に応じた仕事を割り振る
- 失敗が続く場合は難易度を下げる
- *ティーチング力
- 必要があれば積極的に手本を見せる
- 初心者には手順を丁寧に教える
- *コーチング力
- 部下の成熟度が高い場合は積極的に任せる
- 権限を与え自分の頭で考える環境を作る
- *目標への導線の提示
- 仕事の達成地点を明確にする
- プロジェクト達成の過程を明確にする
- *計画への厳格さ
- 一度立てた計画はできる限り守る
- 時間や納期に厳しく指導する
当尺度では、以下の9のタイプを設定しています。タイトルについては協議の上決定しました。
集団維持力‐強い・課題達成力‐高い 理想型
集団維持力‐強い・課題達成力‐中程度 人間関係重視型
集団維持力‐強い・課題達成力‐低い アットホーム型
集団維持力‐中程度・課題達成力‐高い パワフル型
集団維持力‐中程度・課題達成力‐中程度 バランス型
集団維持力‐中程度・課題達成力‐低い 省エネ型
集団維持力‐低い・課題達成力‐高い 成果主義型
集団維持力‐低い・課題達成力‐中程度 実績重視型
集団維持力‐低い・課題達成力‐低い 放任型
診断結果について、それぞれのタイプごとに特徴や注意点を1,000文字前後で評価しました。文章については、先行研究や作成者の臨床経験を基に作成しました。
当診断は因子構造及び信頼性・妥当性をチェックしたものではありません。あくまで専門家としての検討を加えたものです。統計的な根拠が希薄で、研究に耐えられるレベルの尺度ではないことをご了承ください。
[1]組織体のPM式リーダーシップ条件が,モラールとくに達成動機におよぼす効果に関する実証的研究 教育・社会心理学研究 三隅 二不二 1967 第7巻 第1号
*その他の参考文献
リーダーシップ測定のための新しい概念 白樫三四郎 1966 教育・社会心理学研究 5 巻 2 号 p. 135-147
中堅ジェネラリスト看護師のリーダーシップ尺度の信頼性・妥当性の検討 村田 由香 坂田 桐子 2019 人間科学研究 14, 35-46, 2019
変革型リーダーシップ行動がチームの活性度、コミットメントに及ぼす影響―研究開発部門における実証的研究―今井 恵利子 2014 立正大学心理学研究年報 (5), 79-88,
質問紙法による日本の産業場面における状況対応的リーダーシップモデルの研究 高原龍二 山下京 2004 対人社会心理学研究, 4, 41-49.
リーダーシップ行動学の科学 三隅二不二 1984 有斐閣