人間関係を築く上では、相手の話をしっかりと傾聴することが大事です。相槌の豊かさ、相手の話を受け止める力、質問力などがあるかチェックしましょう。
人間関係を築く上では、相手の話を聴くだけでなく、積極的に自己開示をすることも大事です。日常の話題を膨らませることができるか、適度なユーモアがあるかなどチェックしましょう。
会話においては言葉だけでなく、非言語部分の印象の良さも大事になります。特に心理学の研究では、笑顔、アイコンタクト、声の明るさが重視されています。
人間関係には助け合いの側面があり、より良い人間関係を構築するためには相手への配慮も重要です。思いやりがあるか、優しい言葉がけがあるか、改めて確認していきましょう。
健康的な人間関係を構築するためには、お互いの権利を守ることが大事です。もし誰かに権利を侵害されたら、しっかり主張することも必要になります。自分を守る主張スキルがあるか検討してみてください。
現代社会では、SNSを使ったコミュニケーションも大事になってきています。現実とネットをうまく連動させて豊かな関係を築くことができているか、検討してみてください。
1. 歴史的背景
人間関係スキルの心理学的研究は20世紀半ば、行動療法や学習理論を基盤として発展し始めた。社会的不安や対人困難に対する行動的介入が主な焦点となり、1950〜60年代にはバンデューラの社会的学習理論が注目され、対人スキルは観察と模倣によって後天的に習得できるという認識が広まった[1]。
1970年代には、アージルやラザルスらによって対人行動の具体的要素が整理され、社会的スキル訓練(SST)が体系化された。アイコンタクト、非言語的表現、自己主張などが訓練対象となり、実践的なスキルとして確立された[2]。また、日本においては菊池章夫によって、子どもの発達段階に応じたソーシャルスキル教育とその評価法が提案され、教育現場への応用が進んだ[3]。
1980年代以降は、認知行動療法の影響により、対人場面における思考パターンや信念がスキル発揮に与える影響が重視されるようになった。ネガティブな自動思考の修正が対人スキル向上に有効とされている[4]。
2000年代以降は、ゴールマンらによる感情的知性(Emotional Intelligence: EQ)の概念が注目され、自己や他者の感情を理解・調整する力が良好な対人関係の構築に寄与することが明らかにされた[5]。
さらに、相川充は、自己開示、信頼、葛藤解決といった対人関係における心理的要素を整理し、より多角的な理解を提示した[6]。近年では、異文化理解やSNSなどデジタル環境に適応した対人スキルの研究も進み、価値観の多様化に応じた柔軟な人間関係構築の重要性が高まっている[7]。
このように、人間関係スキルの研究は、行動・認知・感情・文化・デジタルの各領域へと拡張し、現代社会に対応した実践的知見を提供し続けている。
2. 尺度の作成
人間関係スキルの構築に関して、既存の尺度として以下のものが挙げられる。
Social Skills Rating System(SSRS):子どもから大人までを対象に、協力、自己主張、自己抑制などを多面的に評価する尺度であり、教師や保護者、本人からの情報を総合して判断される[8]。
Interpersonal Competence Questionnaire(ICQ):対人関係における認知・感情・行動の統合的側面を測定する尺度であり、幅広い対人能力を包括的に評価できる[9]。
KiSS-18(社会的スキルを測る尺度):菊池章夫により開発され、特に子どもを対象としたソーシャルスキル教育のための評価ツールとして有効である[3]。
Digital Social Competence:近年注目されている概念であり、SNSをはじめとするデジタル環境における対人スキルを測定する新しい枠組みである[10]。
本研究では、上記の既存研究に加え、現代に即した新たな尺度を設計した。具体的には、SNS活用スキルや、多様な価値観を持つ人々との柔軟な関係構築力を評価できるよう工夫を加えた。また、心理面(例:自己認知、他者理解、共感性)も含めた構成とすることで、より総合的な人間関係スキルの把握を可能とした。
公認心理師、臨床心理士、心理学の大学院を卒業したものが中心となり、ブレーンストーミングを行いました。その後KJ法により、グルーピングを行い、8のグループにまとめました。その後、検討を加えたうえで質問項目を精査しました。また比較的短時間で診断が終わり、結果を把握できるようにするため、それぞれ3つの項目を採用しました。
- ●傾聴スキル
- 相槌を豊かにうつ
- 相手の話を肯定する方だ
- 質問がすぐに思い浮かぶ
- ●発話スキル
- 自己開示をする方だ
- 話題を膨らませて話すことができる
- ユーモアのある話ができる
- ●非言語力
- 笑顔が豊富にある
- アイコンタクトをしっかりする
- 声が明るい方だ
- ●他者配慮スキル
- 相手の表情をよく見る
- 困った人に気がつく
- やさしい言葉がけができる
- ●主張スキル
- 嫌なことは断る方だ
- 自分の権利を守ることができる
- 建設的に話し合うことができる
- ●前向きさ
- 人間関係を豊かにすることは大事だと思う
- 人と接することは楽しいと思う
- たくさんの人と話して見聞を広げたい
- ●アンガーマネジメント力
- 口調はいつも穏やかである
- 他人にイライラしない方だ
- 人の失敗には寛大な方だ
- ●SNSの活用スキル
- SNSを活用しながら人間関係を築く
- 最新アプリの使用には前向きな方だ
- SNS上で批判するときは慎重になる
診断結果について、それぞれのタイプごとに特徴や注意点を1,000文字前後で評価しました。文章については、先行研究や作成者の臨床経験を基に作成しました。
当診断は因子構造及び信頼性・妥当性をチェックしたものではありません。あくまで専門家としての検討を加えたものです。統計的な根拠が希薄で、研究に耐えられるレベルの尺度ではないことをご了承ください。
1. Bandura, A. (1977). Social Learning Theory. Englewood Cliffs, NJ: Prentice Hall.
2. Argyle, M. (1972). The Psychology of Interpersonal Behaviour. London: Penguin Books.
3. 菊池章夫(1994)『ソーシャル・スキル教育の理論と実際』金子書房.
4. Dobson, K. S. & Dozois, D. J. A. (2001). Risk factors in depression. Academic Press.
5. Goleman, D. (1995). Emotional Intelligence: Why It Can Matter More Than IQ. New York: Bantam Books.
6. 相川充(2005)『対人関係の心理学』有斐閣.
7. 中野明(2018)「SNS時代のコミュニケーション教育」『教育心理学研究』66(3), 211-223.
8. Gresham, F. M. & Elliott, S. N. (1990). Social Skills Rating System. American Guidance Service.
9. Buhrmester, D., Furman, W., Wittenberg, M. T., & Reis, H. T. (1988). Five domains of interpersonal competence in peer relationships. Journal of Personality and Social Psychology, 55(6), 991–1008.
10. Wegerif, R. (2013). Dialogic: Education for the Internet Age. Routledge.