レジリエンス力とは、困難や逆境に直面した際に、
それを乗り越えたり立ち直ったりする力のことです。
精神的な柔軟性や適応力が含まれ、個人の成長や成功を支える要素とされています。
例えば、失敗から学びを得て前進する姿勢や、
ストレスに耐えながらポジティブな思考を保つことが挙げられます。
当診断では、特にビジネスにおけるレジリエンス力を6つの指標で測ることができます。
レジリエンスとは、逆境や困難に直面した際、それを乗り越え適応する力を指します。
Werner (1996) [1]は、ハワイ・カウアイ島での長期縦断研究を通じて、
逆境にある子どもたちの一部が健全に成長することを明らかにし、
この現象を「Vulnerable but invincible(弱いが無敵)」と表現しました。
彼女は、レジリエンスを支える要因として家族や地域社会の支援、自己効力感を挙げています。
一方、Rutter (1987)[2] は、レジリエンスを「心理社会的保護機構」として定義し、
ストレスに適応する過程に着目しました。
彼は、遺伝的要因と環境的要因の相互作用が重要であると指摘し、
保護要因(家族の温かさや学校での良好な人間関係)が困難な状況で個人の適応を助けることを示しました。
このように、レジリエンスは個人の特性と周囲の環境の影響を含む複合的な力として理解されています。
近年では、この概念がビジネスの分野にも応用され、変化が激しい市場環境やプレッシャーの多い職場で、
社員やリーダーの持続的な成果と精神的安定を支える要素として注目されています。
企業はレジリエンス向上のための研修やサポートを導入し、組織全体の適応力を高める動きが進んでいます。
一方でこれまでのレジリエンス研究では、生活全般を扱うもの、スポーツを目的としたもの、
精神疾患を対象としたものが中心で、ビジネス環境を対象としたものは少ない状況です。
現在ではビジネスの現場で使うケースが増加しているため、
本尺度ではビジネス環境を前提としたレジリエンス力尺度を作成することとしました。
レジリエンス尺度の作成に当たっては、以下の先行研究を調査しました。
齊藤・岡安(2010) [3]
大学生を対象に、レジリエンスの測定尺度を開発しました。
本研究では、先行研究をもとに「コンピテンス」「ソーシャルサポート」「肯定的評価」「親和性」「重要な他者」
をレジリエンス要因として抽出し、これを基に尺度作成を行いました。
平野(2010) [4]
資質的レジリエンス要因として「楽観性」「統御力」「社交性」「行動力」
獲得的レジリエンス要因として「問題解決志向」「自己理解」「他者心理の理解」の7因子が見出された。
児玉(2017) [5]
大学生向けのキャリアレジリエンス尺度を開発 し、
キャリアに関連するレジリエンスの測定を可能にしました。
本研究では「問題対応力」「ソーシャルスキル」「新奇・多様性」「未来志向」「援助志向」を
主要因子として採用しました。
Connor & Davidson(2003) [6]
ConnorとDavidsonは、一般成人を対象に心理的回復力を測定するための尺度
Connor-Davidson Resilience Scale(CD-RISC) を開発しました。
本研究では、レジリエンスの「個人的力量」「高い目標の追求と耐性」
「変化の受容と安全志向」「コントロール感」「スピリチュアリティ」などの多面的な構成要素を見出しました。
尺度の作成にあたっては公認心理師、臨床心理士、心理学の大学院卒業者を中心にブレーンストーミングを行いました。
その後、KJ法によりグルーピングし、検討を加えたうえで質問項目を精査しました。
その結果、以下の6因子、各4問の質問を設定しました。
- 1. ソーシャルサポート
- 困ったときに相談できる職場だと思う
- チームワークが良く、お互い支えあえる
- 職場の人間関係は良好だと思う
- 必要なときに助けを求めることができる
- 2. 自己効力感
- 努力次第で業績を改善できると思う
- 問題が起きたら、自分で解決できると思う
- 仕事の進め方を、自分の裁量で変えていける
- 自分は会社にとって必要な人材だと思う
- 3. 楽観主義
- 問題があっても楽観的に考える方だ
- ミスをしても、次に活かせると考える
- 今のキャリアには、多くの可能性がある
- 明るい未来を想像しながら仕事をする
- 4. 問題解決能力
- 課題を整理して、優先順位をつけられる
- 因果関係を把握し解決策を発想する
- 様々な解決策を発想できるほうだ
- 積極的に行動して問題を解決する
- 5. 柔軟性
- 急な予定変更も冷静に対応できる
- 仕事の進め方を柔軟に変えることができる
- 予期しない問題でも動揺せずに対応できる
- 職場環境が変化しても対応できると思う
- 6. 体調管理力
- 過重労働にならないように気を配る
- 食生活は健康的だと思う
- 体調管理には十分気を配る
- 充分な睡眠時間を確保している
・質問項目数 6因子×各4問
・5件法
全く当てはまらない 0点
当てはまらない 1点
どちらともいえない 2点
当てはまる 3点
よく当てはまる 4点
・各因子 高中低の基準
13~16点 高い、9~12点 中程度、0~8点 低い
・総合評価の基準
75~96点 レジリエンス力-かなり高い
59~74点 レジリエンス力-やや高い
43~58点 レジリエンス力-やや低い
0~42点 レジリエンス力-かなり低い
診断結果について、それぞれのタイプごとに特徴や注意点を1,000文字前後で評価しました。文章については、先行研究や作成者の臨床経験を基に作成しました。
当診断は因子構造及び信頼性・妥当性をチェックしたものではありません。
あくまで専門家としての検討を加えたものです。
統計的な根拠が希薄で、研究に耐えられるレベルの尺度ではないことをご了承ください。
[1]Werner, E.E. (1996). Vulnerable but invincible: High-risk children from birth to adulthood. European Child and Adolescent Psychiatry, 5(Supplement 1), 47-51.
[2]Rutter, M. (1987). Psychosocial resilience and protective mechanisms. American Journal of Orthopsychiatry, 57(3), 316–331.
[3]齊藤和貴, 岡安孝弘 (2010). 大学生用レジリエンス尺度の作成. 明治大学心理社会学研究, 5, 22.
[4]平野真理 (2010). レジリエンスの資質的要因・獲得的要因の分類の試み――二次元レジリエンス要因尺度 (BRS) の作成. パーソナリティ研究, 19(1), 35-48.
[5]児玉真樹子 (2017). 大学生用キャリアレジリエンス測定尺度の開発. 学習開発学研究, 10, 45-60.
[6] Connor, K. M., & Davidson, J. R. T. (2003). Development of a new resilience scale: The Connor-Davidson Resilience Scale (CD-RISC). Depression and Anxiety, 18(2), 76–82. https://doi.org/10.1002/da.10113