当メンタルヘルス診断はWHOの定義を参考に作成されています。具体的には以下の8つの指標でメンタルヘルスを測ることができます。
認知とは物の考え方や、捉え方を意味します。心理学の研究では、認知に歪みがあると、心が不健康になりやすいことがわかっています。
ソーシャルサポートは周りの人の助けを意味します。困った時に助けてくれる人がいることは、メンタルヘルスにおいて極めて重要です。
ソーシャルスキルとは、社会生活を営むスキル、会話力、主張するスキルを意味します。健康的な人間関係を築く上で大事な指標となります。
自己実現とは、力を発揮できている、やりがいのある活動ができている、という感覚を意味します。WHOの基準では、自分らしくチャレンジしていることがメンタルヘルスに重要とされています。
社会的役割とは、社会貢献ができている、誰かの役に立っている感覚を意味します。WHOの基準では、社会に対しての健康的な役割を持つことが重視されています。
診断結果には、特徴と注意点を解説させて頂きました。注意点については、おススメのコラムも掲載しています。是非、活用してみてください。
20世紀前半まで、臨床心理学や精神医学の世界では、病気を治すことに主眼が置かれ、精神衛生、精神保健と言う言葉が使われることが主でした。一方で20世紀後半になると、病気の治療だけでなく、社会的活動の促進まで含めた意味として使われるようになっていきました。定義としては、様々なものがありますが、最も浸透しているものは以下のWHOの定義となります。
- 精神的健康とは、単に精神障害でないということではない。それは、一人一人が自らの可能性を実現し、人生におけるストレスに対処でき、生産的に充実感をもって働くことができ、共同体に貢献することができる、十全な状態である(WHO,2007)[1]
当尺度はこちらのWHOの定義を土台とすることとしました。一方でWHOはメンタヘルスの状況を測る尺度を作成しているわけではありません。そこで当診断では、関連する尺度や関連する理論を集め、参考にしました。具体的には、MHC-SF[2][3]、GHQ 精神健康調査票[4]、ポジティブ心理学5つの指標[5]、などの先行研究を精査しました。
公認心理師、臨床心理士、心理学の大学院を卒業したものが中心となり、ブレーンストーミングを行いました。その後KJ法により、グルーピングを行い、8のグループにまとめました。その後、検討を加えたうえで質問項目を精査しました。また比較的短時間で診断が終わり、結果を把握できるようにするため、それぞれ3つの項目を採用しました。
- ①抑うつ感
- 生活が充実していると思う
- 明るい気持ちである
- ぐっすり眠れていると感じる
- *点数が大きいほど抑うつ感は少ない
- ②不安感
- 楽観的に考える方だ
- 将来、安心できる暮らしをしていると思う
- 緊張はあまりしないほうだ
- *点数が大きいほど不安は少ない
- ③孤独感
- 人間関係が充実していると感じる
- 自分を理解してくれている人がいる
- 会話をする機会が豊富にある
- *点数が大きいほど孤独感は少ない
- ④認知的健康度
- 物事をバランスよく考える
- 感情的に考えすぎず、論理的に考える
- 思い込みにならないよう現実的に考える
- ⑤ソーシャルサポート
- 困った時に助けてくれる人がいる
- 悩みの相談ができる人がいる
- 楽しく会話できる環境がある
- ⑥ソーシャルスキル
- 社交的な会話ができる
- 笑顔で人と接することができる
- 嫌なことをされたら断ることができる
- ⑦自己実現
- やりたいことが明確にある
- 自分の力を発揮していると感じる
- 目標に向かって充実して取り組んでいる
- ⑧社会的役割
- 社会に貢献していると感じる
- 社会に必要とされていると感じる
- 社会的に認められていると感じる
診断結果について、それぞれのタイプごとに特徴や注意点を1,000文字前後で評価しました。文章については、先行研究や作成者の臨床経験を基に作成しました。
当診断は因子構造及び信頼性・妥当性をチェックしたものではありません。あくまで専門家としての検討を加えたものです。統計的な根拠が希薄で、研究に耐えられるレベルの尺度ではないことをご了承ください。
[1]WHO メンタルヘルス定義Mental health: strengthening our response Fact sheet Updated April 2016
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs220/en/
[2]大片 久, 澤田 陽一, 大形 篤, 矢嶋 裕樹, 坂野 純子 2021 ポジティブな精神的健康をとらえる日本語版Mental Health Continuum Short Form(MHC-SF-J)の高齢者における妥当性と信頼性の検証
[3]Joshanloo, Mohsen; Lamers, Sanne M.A. (July 2016). "Reinvestigation of the factor structure of the MHC-SF in the Netherlands: Contributions of exploratory structural equation modeling". Personality and Individual Differences. 97: 8–12. doi:10.1016/j.paid.2016.02.089.
[4]中川泰彬,大坊郁夫:日本版 GHQ 精神健康調査票手引.日本文化科学社,東京,1985
[5]Seligman, M. E. P. 2002a Positive psychology, positive prevention, and positive therapy. In C. R. Snyder, & S. J. Lopez (Eds.), Handbook of positive psychology. New York: Oxford University Press.
*その他の参考文献
大学生のメンタルヘルス尺度の作成と不登校傾向を規定する要因利用統計を見る 松原 達哉 宮崎 圭子 三宅 拓郎 立正大学心理学研究所紀要 4号 1 - 12 2006
中学校におけるメンタルヘルス尺度の構成の試みースクールカウンセラー活動の一環としてー 鈴木 美樹江 東邦学誌, 39(2), 113-120 (2010-12-01)福利厚生施策の在り方に関する研究会(第1回) 平成21年6月5日 総務省 10 階共用会議室1
Kessler Psychological Distress Scale (K10)https://www.aci.health.nsw.gov.au/__data/assets/pdf_file/0015/212901/Kessler_10_and_scoring.pdf
日本語版自己記入式・簡易抑うつ症状尺度(日本語版QIDS-SR)