尺度を作成するにあたって、まずは先行研究を調査しました。孤独感ついては1960~1980年代に様々な尺度が開発されています。尺度の方向性としては主に2点あげられます。1つは孤独感を単一次元で捉えるやり方で、もう1つは多次元で捉えるやり方です。例えば、諸井(1991)[1]は孤独感尺度の作成にあたって次元性の検討を行い、その結果、単次元であることを確認しています。Asher(1984)[2]は孤独感の尺度を作成し「孤独感」「社会的不満足」の2因子を抽出しました。落合(1974)[3]は孤独感を「個別性」「共感」の2次元から捉えています。孤独感尺度の作成にあたってはこれらの先行研究を参考にしました。
その後、検討を重ねた結果、先行研究の問題として「環境」の要因を分析している尺度がないことがわかりました。例えば、人間関係が複数ある環境にいる人でも孤独を感じる人もいれば、いない人もいます。また人間関係が希薄な状態でも孤独を感じない人も複数います。そこで当尺度は実用的な観点から、これらの環境も含めた孤独感を分析するツールとして作成することにしました。
「孤独感」に関する質問を10問、「孤独環境」に関する質問を10問を作成することとしました。それぞれの測定項目について、公認心理師、臨床心理士、心理学の大学院を卒業したものが中心となり、先行研究を参考にしながらブレーンストーミングを行いました。その後KJ法により、グルーピングを行い、検討を加えたうえで質問項目を精査しました。実際のグルーピングは下記のようになりました。
- 「孤独感」
- ・寂しさ
- 一人ぼっちで寂しい
- ふれあいが欲しいと感じる
- ・親密性の不足
- 気軽な話ができる人がいない
- 心からわかりあえる人がいない
- ・見捨てられ不安
- 仲良くなればなるほど別れが不安になる
- 見捨てられる不安がある
- ・社会からの孤立
- 社会に居場所がないと感じる
- 周りに置いて行かれていると思う
- ・将来への不安
- 将来孤独になることを恐れる
- このままでは寂しい人生になると感じる
- 「孤独環境」
- ・家庭環境
- 家族と日々会話がある
- 定期的に家族が集まる行事がある
- ・友人関係
- 休日は友人と遊ぶほうだ
- 定期的に友人と集まる
- ・仕事場
- 会話がある職場である
- 上司や同僚に悩みが相談できる
- ・コミュニティ
- 趣味やボランティアで人と接する
- 顔見知りがいるコミュニティがある
- ・ネットでのつながり
- SNSでの気軽なやり取りがある
- ブログやメールでのやり取りがある
当尺度では、以下の9のタイプを設定しています。タイトルについては協議の上決定しました。
強い孤独感あり・社交環境‐豊富 強い見捨てられ不安タイプ
強い孤独感あり・社交環境‐中程度 見捨てられ不安タイプ
強い孤独感あり・社交環境‐少ない 人間関係切望タイプ
やや孤独感あり・社交環境‐豊富 対人不安タイプ
やや孤独感あり・社交環境‐中程度 寂しがり屋タイプ
やや孤独感あり・社交環境‐少ない 孤独な寂しがり屋タイプ
孤独感ない・社交環境‐豊富 リアル充実健康タイプ
孤独感ない・社交環境‐中程度 冒険家タイプ
孤独感ない・社交環境‐少ない 孤独愛好タイプ
診断結果について、それぞれのタイプごとに特徴や注意点を1,000文字前後で評価しました。文章については、先行研究や作成者の臨床経験を基に作成しました。
当診断は因子構造及び信頼性・妥当性をチェックしたものではありません。あくまで専門家としての検討を加えたものです。統計的な根拠が希薄で、研究に耐えられるレベルの尺度ではないことをご了承ください。
[1]改訂 UCLA 孤独感尺度の次元性の検討 諸井克英 - 静岡大学人文学部人文論集, 1991
[2]Asher, S. R., Hymel, S., & Renshaw, P. D. (1984).Loneliness in children. Child Development, 55, 1456–1464.
[3]孤独感の類型判別尺度 (LSO) の作成 落合良行 - 教育心理学研究, 1983
*その他の参考文献
成人用ソーシャルスキル自己評定尺度の構成 相川 充 藤田 正美 東京学芸大学紀要 第1部門 教育科学 56, 87-93, 2005
高齢者における日本語版 UCLA 孤独感尺度 の開発とその信頼性・妥当性の検討舛田ゆづり, 田髙悦子, 臺有桂 - 日本地域看護学会誌, 2012
異なった関係における孤独感尺度の構成 広沢俊宗 田中国夫 関西学院大学社会学部紀要49 1984