診断の前に簡潔に解説をさせて頂きます。内向性と外向性は、心理学者のユングによって広められ、その後、心理学や精神医学の世界で様々な研究がなされてきました。「内向性」とは、興味や関心が自分自身の内面に向く性質のことです。逆に、「外向性」とは、興味や関心が外界に向く性質のことです。
内向的な方は、少人数での行動を好みます。同じ考えを持つ人とじっくり語り合うことを大事にします。発言の前に、いったん考えるので、発話が遅れがちにはなりますが、深い語りができます。
内向的な方は、研究職、芸術家、発明家、職人、士業などに多いとされています。思考が深く、世の中を変えるような画期的なアイデアを生み出していきます。
多人数での行動を好みます。異なる考えを持つ人との交流を積極的に楽しむことができます。明るい雰囲気の方が多く、人の輪ができやすいといえます。
外向的な方は、接客業、人事、講師業、コンダクターなど、に多いとされています。人と接する場面に前向きで充実感を得ることができます。
当診断では、内向性、外向性の観点から9つのタイプに分けて分析することができます。各タイプにはそれぞれの特徴と注意点を解説しています。参考にして頂けると幸いです。それでは早速、診断にチャレンジしてみましょう。
尺度を作成するにあたって、先行研究を調査をしました。
・MBTI
MBTIはユングが提唱した、感覚、直観、感情、思考を元にタイプ分けする尺度となります。その1つにEI指標が設定されています。EI指標は外向型(Extroversion)、内向型(Introversion)を分類する形となります[1][2]。一方で、統計的な根拠は希薄であるとの批判もあります。
・YG 性格検査
YG性格検査では12の特性について性格を分析することができます[3]。その中にT尺度((thinking extra/intra)が設定されています。T尺度は思考的内向/外向を測定する項目となります。
・ビッグファイブ性格検査
性格を5つの因子に分類し、そのうちの1つとして、外向性‐内向性を測定します[4]。近年、頻繁に研究で使用されています。
・MMPI
MMPIは4の妥当性尺度、10の臨床尺度によって性格傾向やメンタルヘルスの状況を測定することができます。研究においては、臨床尺度のうち第0尺度において社会的内向性が測定されます[5]。
尺度の作成にあたってはこれらの先行研究を参考にしました。先行研究では主に、内向性、外向性どちらか一方の因子の大きさを測ることが多く、外向、内向それぞれを測ることが少ないといえます。この点について、内向性と外向性は両方持っている説もあり[6]、場面によって使い分けているケースもあると筆者の川島は考えています。そのため当尺度では、両向性まで測れる尺度として作成することとしました。
それぞれの測定項目について、公認心理師、臨床心理士、心理学の大学院を卒業したものが中心となり、ブレーンストーミングを行いました。その後KJ法により、グルーピングを行い、検討を加えたうえで質問項目を精査してました。最終的には、内向性に関する質問を10問、外向性に関する質問を10問作成しました。
- <内向性>
- ・思考性
- 物事を深く考える方だ
- 研究することが好きである
- しっかり反省する方だ
- ・人間関係
- じっくり関係を深めていきたい
- 人付き合いは狭く深いほうだ
- 共通の話題を深く語りあいたい
- ・活動性
- インドアで過ごすことが好きである
- なるべく平穏な生活を求める
- ・衝動性
- 決断には時間をかけるほうだ
- 計画をしっかり立てる
- <外向性>
- ・思考性
- 楽観的に考える方だ
- 必要以上に考えない
- 他人の意見をしっかり聞く
- ・人間関係
- たくさんの人と交流したいと思う
- 知らない話題に興味を持つ
- 集団で出かけることを楽しめる
- ・活動性
- チャレンジすることが好きである
- 日々の生活に変化があった方が楽しい
- ・衝動性
- 小さなことには迷わず決断する
- 思い切って行動できる方だ
当尺度では、以下の9タイプを設定しています。タイトルについては協議の上決定しました。
内向性‐高い・外向性‐高い リーダー型
内向性‐高い・外向性‐中程度 企画者型
内向性‐高い・外向性‐低い 研究者型
内向性‐中程度・外向性‐高い 起業家型
内向性‐中程度・外向性‐中程度 バランス型
内向性‐中程度・外向性‐低い プチオタク型
内向性‐低い・外向性‐高い はっちゃけ型
内向性‐低い・外向性‐中程度 お人よし型
内向性‐低い・外向性‐低い 悟り型
診断結果について、それぞれのタイプごとに特徴や注意点を1,000文字前後で評価しました。文章については、先行研究や作成者の臨床経験を基に作成しました。
当診断は因子構造及び信頼性・妥当性をチェックしたものではありません。あくまで専門家としての検討を加えたものです。統計的な根拠が希薄で、研究に耐えられるレベルの尺度ではないことをご了承ください。
[1]MBTI 日本語版に関する基礎研究 中澤清 - 人文論究, 1997 - kwansei.repo.nii.ac.jp
[2]わかりやすいMMPI活用ハンドブック―施行から臨床応用まで (日本語) 2011 日本臨床MMPI研究会 野呂 浩史 井手 正吾 荒川 和歌子
[3]清水 和秋, 山本 理恵 2017 YG 性格検査の12尺度の内部構造 : カテゴリー因子分析のBifactor Geomin 回転 関西大学社会学部紀要
[4]和田さゆり 1996 性格特性用語を用いた BigFive尺度の作成心理学研究, 67, 61・67
[5]井手正吾 (2011):MMPIの概要 野呂・荒川・井手(編)わかりやすいMMPI活用ハンドブック 金剛出版 pp.15-24.
[6]Davidson IJ. The ambivert: A failed attempt at a normal personality. J Hist Behav Sci. 2017 Sep;53(4):313-331. doi: 10.1002/jhbs.21868. Epub 2017 Sep 19. PMID: 28926096.
*その他の参考文献
内向外向次元の検討 二つの向性と神経症傾向との関係 福島脩美 - 教育心理学研究, 1968
外向性・内向性の概念に関する文献的考察 : Jung, Rorschach, YG, 16PF, MPI, NEO-PI-Rに記述された外向性の定義からの考察 山下 竜一 横山 恭子 上智大学心理学年報 40, 9-18, 2016