ハラスメントリスク自己診断
本ハラスメント診断は公認心理師が監修し作成しました。
パワハラ防止法や厚生労働省の関連指針を踏まえ、ハラスメントのリスクを下記の5つの視点からチェックすることができます。
① 法令順守リスク
② 業務マネジメントリスク
③ コミュニケーションリスク
④ セルフコントロールリスク
⑤ 過剰回避リスク
所要時間は約10分です。
結果は因子ごとに解説され、明日から使える改善のヒントもあわせてご紹介します。
今のマネジメントを振り返るきっかけに、ぜひご活用ください。
自己理解をより深めたい方は、公認心理師へのご相談も可能です。 専門家の視点を知りたい、改善するための指導を受けたい、 などご要望に応じた相談ができます。
法人様の利用、商用利用については有料となります。不正利用の場合は著作権法違反となりますのでご注意ください。詳しい条件は以下のページを参照ください。
以下、ハラスメントリスク自己診断の作成手順を詳しく解説しています。より深く理解したい方はご一読ください。
2020年6月、労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が施行され、2022年4月からは中小企業にも防止措置義務の対象が拡大されました。
あわせて男女雇用機会均等法・育児介護休業法に基づく指針も整備され、企業規模を問わず、ハラスメント防止は避けて通れない経営課題となっています。
厚生労働省の調査でも、職場でのいじめ・嫌がらせに関する相談件数は高い水準で推移しており、SNSやニュース報道を通じてハラスメント問題が可視化される機会も増えています。多くの企業がハラスメント研修を実施するようになった一方、研修の現場では「知識としては理解していても、自分自身の言動を客観的に振り返る機会がない」という声が多く聞かれます。
さらに近年は、ハラスメントへの意識の高まりが行き過ぎ、「叱れない」「関われない」といった過剰な回避行動(事なかれ主義)も新たな課題として浮上しています。これは加害リスクとは逆方向の問題でありながら、部下の育成機会の損失や職場の風通しの悪化につながる、もう一つのハラスメントリスクです。過剰な指導によるハラスメントと、ハラスメントを恐れるあまり指導や関わりを避けてしまう事なかれ主義は、どちらも職場の機能不全につながるリスクだと言えます。
本診断は、こうした社会的背景を踏まえ、管理職・リーダー層が自分自身の言動を、加害・回避の両方向から客観的にセルフチェックできるツールとして作成しました。具体的にどのような視点で測定するかについては、次の「②先行研究の分析」で解説します。
尺度の作成に当たっては、以下の先行研究・制度を調査しました。
ハラスメントリスクを整理するにあたり、本尺度は「①法令順守リスク」「②業務マネジメントリスク」「③コミュニケーションリスク」「④セルフコントロールリスク」「⑤過剰回避リスク」という5つの視点を採用しました。
理由は大きく3つあります。
第一に、ハラスメントは単一の原因から生じるものではなく、「加害行動そのもの」「マネジメントの巧拙」「コミュニケーションの質」「本人の心理状態」「ハラスメント意識の高まりによる過剰反応」という、性質の異なる複数の要因が絡み合って生じるため、単一の視点では捉えきれないことです。
第二に、①〜④(加害・不全方向のリスク)と⑤(回避方向のリスク)を明確に分けることで、「厳しすぎる人」と「関わらなすぎる人」という対照的な2つのリスクパターンを同時に可視化できることです。第三に、研修現場での運用実績から、5つ程度の視点であれば、受講者が短時間で自分の傾向を把握しやすいことです。
【測定する5×3の15項目】
① 法令順守リスク:パワハラ/セクハラ/マタハラ
② 業務マネジメントリスク:業務目標/業務量/業務支援
③ コミュニケーションリスク:ラポール形成の不足/不機嫌な態度/怒りの表出
④ セルフコントロールリスク:感情の自己認知不足/完璧主義・思い込みの強さ/ストレス耐性・セルフケア不足
⑤ 過剰回避リスク:ハラスメント恐怖/指導回避/会話回避
診断結果については、それぞれに応じた改善の視点も解説します。
マネジメント・コミュニケーションの改善にお役立てください。
厚生労働省(2020)[1][2]
2020年施行の労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法、中小企業は2022年4月完全施行)および厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(2020年)は、パワーハラスメントの定義と類型を示しています。セクシュアルハラスメント・マタニティハラスメントについても、男女雇用機会均等法・育児介護休業法に基づく指針が事業主の措置義務を定めています。本尺度では、この定義・類型を「①法令順守リスク」の下位因子(パワハラ/セクハラ/マタハラ)に反映させました。
Bakker & Demerouti(2007)[3]
ジョブ・ディマンド-リソースモデル(JD-Rモデル)は、過大な要求(業務量・無理な目標)と不十分な資源(支援・裁量)の組み合わせが、燃え尽きや対人関係の悪化を招くことを示しています。本尺度では、この知見を「②業務マネジメントリスク」(業務目標/業務量/業務支援)の設計に反映させました。
Edmondson(1999)[4]
心理的安全性研究は、日常の関わり方が対人リスクを取れる関係性(信頼)を左右することを示しています。不機嫌な態度や感情の表出はノンバーバルな圧力として部下に伝わりやすく、ラポール形成の不足は日頃の「信頼貯金」を目減りさせるとされます。本尺度では、この知見を「③コミュニケーションリスク」の設計に反映させました。
Goleman(1995)[5]
感情知性(Emotional Intelligence)は、自己の感情への気づき(自己認知)と自己統制が対人行動の質を左右するとしています。認知の硬直性(完璧主義・思い込み)やストレス耐性の低さは、感情のコントロールを困難にし、過剰な指導や怒りの表出につながりやすい内的要因です。本尺度では、この知見を「④セルフコントロールリスク」の設計に反映させました。
Morrison & Milliken(2000)[6]
組織的沈黙(Organizational Silence)研究は、従業員や管理職が問題を認識しながらも、対立や評判の悪化を恐れて発言・指摘を避ける現象を指摘しています。本尺度では、この「言うべきことを言わない」傾向を、ハラスメントへの過剰な恐れから生じる回避行動として捉え、「⑤過剰回避リスク」の設計に反映させました。
尺度の作成にあたっては公認心理師、社会保険労務士、企業の人事責任者を中心にブレーンストーミングを行いました。その後、KJ法によりグルーピングし、検討を加えたうえで質問項目を精査しました。
現代の職場で求められるハラスメントリスクの多面的な把握のため、以下の5つの視点を重視し、項目を考案しました。
・法令順守リスク
法律・社内規程に抵触しうる、明確なハラスメント言動そのものを測る力
・業務マネジメントリスク
業務量・目標設定・支援体制など、マネジメントのあり方そのものが生むリスク
・コミュニケーションリスク
日々の接し方・関わり方が信頼関係(心理的安全性)に与える影響
・セルフコントロールリスク(メンタルマネジメント)
外には表れにくい、本人の内面的な心のあり方
・過剰回避リスク
ハラスメントを恐れるあまり、指導・関与そのものを避けてしまう萎縮傾向
これらの視点は、ハラスメントが「加害行動」「マネジメントの巧拙」「コミュニケーションの質」「本人の心理状態」「ハラスメント意識の高まりによる過剰反応」という、性質の異なる複数の要因から生じるという考えに基づいています。
その結果、以下の5因子・15下位因子、各3問、合計45問の質問を設定しました。①・⑤は「行動2問+内面1問」、②・③は「行動のみ」、④は「内面のみ」で統一しています。
※⑤過剰回避リスクは、①〜④とは性質の異なる「回避方向」のリスクを測る独立因子と位置づけ、後述の総合評価(合算スコア)には含めず、単独の結果として表示する仕様とします。詳細は「④評価の基準」を参照してください。
【① 法令順守リスク】
・パワハラ
感情的になり、大声で叱責してしまうことがある
部下の人格を否定するような発言をしてしまうことがある
多少強い指導も仕方ないと思うことがある
・セクハラ
交際関係をしつこく質問してしまうことがある
外見や服装に不要な発言をしてしまうことがある
多少の下ネタなら場が和むと思うことがある
・マタハラ
時短勤務者へ不満を示してしまうことがある
妊娠や育休を否定するような発言をしてしまうことがある
育児への配慮を特別扱いだと感じることがある
【② 業務マネジメントリスク】
・業務目標
達成困難な目標をそのまま課すことがある
根拠のない精神論で達成を求めてしまう
目標設定で部下の状況を考慮できないことがある
・業務量
部下の業務量を把握せず依頼することがある
残業の常態化を見直そうとしないことがある
自分の忙しさで配慮が後回しになることがある
・業務支援
部下からの相談を後回しにしてしまうことがある
新しい業務を任せきりにしてしまうことがある
部下の育成を後回しにしてしまうことがある
【③ コミュニケーションリスク】
・ラポール形成の不足
業務以外の会話をほとんどしないことがある
部下に話しかけにくいと言われたことがある
部下の状況に関心を持てないことがある
・不機嫌な態度
機嫌の悪さが表情や態度に出てしまうことがある
疲れていると対応がそっけなくなることがある
不機嫌な態度が周囲に伝わっていると感じる
・怒りの表出
感情的になり強い口調で話してしまうことがある
怒った態度をしばらく引きずってしまう
怒りをその場で抑えられないことがある
【④ セルフコントロールリスク】
・感情の自己認知不足
自分のイライラに後から気づくことが多い
ストレスの蓄積を自覚しにくいことがある
感情の変化を人に指摘されて気づくことがある
・完璧主義・べき思考
こうあるべきという考えに固執してしまう
自分のやり方に固執してしまうことがある
細かいミスを必要以上に指摘してしまう
・セルフケア不足
ストレス発散の方法を持っていないことがある
忙しいと休息を後回しにしてしまうことがある
我慢の末に感情が爆発してしまうことがある
【⑤ 過剰回避リスク】
・ハラスメント恐怖
指導する場面で強い不安を感じることがある
自分の言動に過剰に神経質になることがある
注意すると嫌われると思ってしまうことがある
・指導回避
部下に言うべきことを避けてしまうことがある
指摘すると角が立つと思ってしまうことがある
問題を見ても見て見ぬふりをしたくなる
・会話回避
異性の部下との会話を過度に避けることがある
二人きりの状況を不自然に避けてしまう
異性と関わることに緊張を感じてしまう
・質問項目数 5因子×3下位因子×各3問=45問
・5件法
全く当てはまらない 0点
当てはまらない 1点
どちらともいえない 2点
当てはまる 3点
よく当てはまる 4点
※本診断は「加害・回避リスクの気づき」を目的とするため、点数が高いほどリスクが高いことを示す設計とし、基準はかなり厳しめに設定しています(「どちらともいえない」で回答し続けた場合でも「高い」に該当するよう調整)。
・5大因子得点(各9問 36点満点)
0~6点 低い
7~15点 中程度
16~36 点 高い
・各下位因子(3問・満点12点)の基準
0~1点 低い(良好)
2~5点 中程度(やや注意)
6~12点 高い(要注意)
・総合評価の対象と算出方法
本診断は、①法令順守リスク・②業務マネジメントリスク・③コミュニケーションリスク・④セルフコントロールリスクの4因子(36問・満点144点)を対象に総合評価を算出します。
⑤過剰回避リスク(9問・満点36点)は、①〜④とは方向性の異なる「回避リスク」を測る独立因子であるため、総合評価(合算スコア)には含めず、単独の結果として表示します。加害方向のリスク(①〜④)と回避方向のリスク(⑤)を一つの点数に合算してしまうと、「加害寄りの人」と「回避寄りの人」が同じスコアになり得るため、結果の解釈がかえって不明瞭になるための措置です。
・総合評価の基準(①〜④・36問・満点144点)
0~16点 ハラスメントリスクー良好
17~44点 ハラスメントリスクーやや注意
45~80点 ハラスメントリスクー要注意
81~144点 ハラスメントリスクー重大なリスクあり
・⑤過剰回避リスクの基準(9問・満点36点、独立集計)
0~3点 過剰回避リスクー低い(良好)
4~15点 過剰回避リスクーやや高い(やや注意)
16~36点 過剰回避リスクー高い(要注意)
※算出方法・区分は①〜④の総合評価基準と同一の考え方です。結果画面では「総合評価」とは別枠で表示します。
診断結果について、15の下位因子および5つの大項目(総合評価・過剰回避リスク)ごとに、特徴や職場で起こりやすい事象、改善のための具体的な行動指針を1項目あたり300~500文字前後で評価します。文章については、先行研究や作成者の実務経験を基に作成しました。
当診断は因子構造及び信頼性・妥当性をチェックしたものではありません。あくまで専門家としての検討を加えたものです。統計的な根拠が希薄で、研究に耐えられるレベルの尺度ではないことをご了承ください。
また、本診断は自己申告(自己評価)に基づくものであり、実際のハラスメント該当性の法的判断・懲戒等の人事措置の根拠として使用することはできません。ハラスメントに関する具体的な相談・判断が必要な場合は、社内相談窓口・弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
[1]厚生労働省(2020)「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
[2]労働施策総合推進法(通称:パワーハラスメント防止法)
[3]Bakker, A. B., & Demerouti, E. (2007). The Job Demands-Resources model: State of the art. Journal of Managerial Psychology, 22(3), 309-328.
[4]Edmondson, A. (1999). Psychological safety and learning behavior in work teams. Administrative Science Quarterly, 44(2), 350-383.
[5]Goleman, D. (1995). Emotional Intelligence: Why It Can Matter More Than IQ. Bantam Books.
[6]Morrison, E. W., & Milliken, F. J. (2000). Organizational silence: A barrier to change and development in a pluralistic world. Academy of Management Review, 25(4), 706-725.
[7]平木典子(2009)『アサーション・トレーニング―さわやかな〈自己表現〉のために』日本・精神技術研究所
・目白大学大学院 心理学研究科修了
・公認心理師、精神保健福祉士
・早稲田大学大学院 人間科学研究科修了
・臨床心理士、公認心理師
