アダルトチルドレンとは、
機能不全家庭で育った幼少期の体験がその後の人生に影響を及ぼし、
何らかの問題を抱えている大人を指します。
具体的には、家庭内での愛情不足や過剰な期待、
暴力やアルコール依存などが原因で、
対人関係や自己肯定感に問題を抱えることがあります。
当診断では、アダルトチルドレン傾向を6つの指標で測ることができます。
アダルトチルドレン診断は、過去の記憶を呼び起こす可能性があります。リスクのある診断となりますので慎重にご利用ください。心の状態が悪い場合は、期間をおいてのご利用をおすすめします。
1955年にアメリカ医師会(AMA)がアルコール依存症を病気として認めたことを契機に、
アルコール依存症の治療が進められるようになりました。
アルコール依存が病気と認められることで、
その原因や家族への心理的影響・世代間連鎖を探っていくスタートが切られたと言えます。[1]
その後、1969年にカナダでマーガレット・コークが著書『忘れ去られた子供たち』を出版し、
アルコール依存症患者本人だけでなく、その子どもたちにも問題が多いことを強調しました。[2]
1970年代には、援助者や患者の間で「アダルトチルドレン」という言葉が使われるようになり、
1983年にアメリカの教育学者のジャネット・G・ウォイティッツが
『アダルトチルドレン・オブ・アルコホリックス』を出版し、用語は広く普及しました。[3]
初めはアルコール依存症家庭に限られていましたが、
次第に虐待や過度な期待がかけられた家庭にも適用されるようになり、
機能不全家族全般を指す言葉となりました。
ジョン・ブラッドショーの著書(1988)では、
アルコール依存症家庭で育った子どもたちが成人後に感情的な問題を抱えることを詳述し、
アダルトチルドレンという理論が広まりました。[4]
アダルトチルドレンは、感情の抑制や過度な自己責任感、
対人関係の回避といった特徴を持ち、成人後も人間関係に問題を抱えることが多いとされています。
1980年代から1990年代にかけて、アダルトチルドレンに関する支援が進み、
心理療法や自助グループによる支援が増加しました。これにより、
アダルトチルドレンに対する理解と治療が進み、
現代の心理学やカウンセリングにおける重要なテーマとなっています。
アダルトチルドレン尺度の作成に当たっては、以下の先行研究を調査しました。
・Woititz(1983) [3]
「アダルトチルドレン・オブ・アルコホリックス」の著書で、
アダルトチルドレンに共通する特徴として「感情の抑制」「過度な自己責任感」
「対人関係の回避」を指摘しました。
・Bradshaw(1988) [4]
家庭環境が悪いことによる影響を深く掘り下げ、機能不全家族には、
共依存、意志の喪失、否認などの行動パターンがあることについて言及されています。
・笹野ら(1998) [5]
機能不全家族とアダルトチルドレンの関係を調査する過程で、1因子構造のアダルトチルドレン尺度が作成されました。
公認心理師、臨床心理士、心理学の大学院卒業者を中心にブレーンストーミングを行いました。
その後、KJ法によりグルーピングし、検討を加えたうえで質問項目を精査しました。
その結果、以下の6因子、各4問の質問を設定しました。
- 【家族の機能不全度】
- 感情を素直に表現できない家庭環境だった
- 家族内で感情的に爆発する人がいた
- 家族に支配的な人がいた
- 家庭内が安心できる場所ではなかった
- 【記憶の持続】
- 幼少期の家族の態度が今も心に残る
- 家族との関係が心の負担になり続ける
- 家族の期待に応えようと無理をする
- 家族の顔色を気にして行動を決める
- 【自己評価の不安定さ】
- 自分の価値を低く感じることが多い
- 他人の評価に強く影響されやすい
- 自分に自信を持てず行動を控えがち
- 小さな失敗でも自分を責め続ける
- 【感情の抑制】
- 自分の気持ちを素直に表現できない
- 本音を伝えず周囲に合わせてしまう
- 悲しみや怒りを我慢し続けてしまう
- 感情を抑え込み心の中で処理する
- 【対人関係の困難さ】
- 親しい人に対しても距離を感じる
- 人と深く関わることを避けがち
- 他人の視線を過剰に気にしてしまう
- 信頼しても裏切られると感じやすい
- 【過剰な責任感】
- 他人の問題まで自分が解決しようとする
- 自分が頑張らないといけないと感じる
- 自分を犠牲にしてでも周囲を優先する
- 助けを求めることをためらってしまう
・質問項目数 6因子×各4問
・5件法
全く当てはまらない 0点
当てはまらない 1点
どちらともいえない 2点
当てはまる 3点
よく当てはまる 4点
・各因子 高中低の基準
12~16点 注意、9~11点 やや注意、0~8点 良好
・総合評価の基準
75~96点 AC傾向-かなりある
59~74点 AC傾向-ややある
43~58点 AC傾向-わずかにある
0~42点 AC傾向-ない
診断結果について、それぞれのタイプごとに特徴や注意点を1,000文字前後で評価しました。文章については、先行研究や作成者の臨床経験を基に作成しました。
当診断は因子構造及び信頼性・妥当性をチェックしたものではありません。
あくまで専門家としての検討を加えたものです。
統計的な根拠が希薄で、研究に耐えられるレベルの尺度ではないことをご了承ください。
[1] American Medical Association (1955). Alcoholism: An Illness. Journal of the American Medical Association, 158(11), 970-973.
[2] Cork, M. (1969). The Forgotten Children: A Study of Children with Alcoholic Parents. Toronto: Macmillan.
[3] Woititz, J. G. (1983). Adult Children of Alcoholics. Deerfield Beach, FL: Health Communications.
[4] Bradshaw, J. (1988). Bradshaw On: The Family: A New Way of Creating Solid Self-Esteem. Health Communications.
[5] 笹野友寿・塚原貴子(1998).大学生の精神保健に関する研究: 機能不全家族とアダルト・チルドレン.川崎医療福祉学会誌, 8(1), 107-114.