コーチング力は、メンバーの考える力を向上させ、目標達成を促すコミュニケーションの手法です。特に管理職に必須のスキルとなります。当診断では、5つの指標でビジネス場面でのコーチング力を測ることができます。
コーチと相手のラポールの形成はコーチングのあらゆる土台となります。ラポールの形成とは、心の繋がりや信頼関係を意味します。日々の何気ないコミュニケーションを大事にしましょう。
コーチングがうまくいくためには、対象となる人の感情や考え方をしっかり把握する必要があります。その際必要なのが、オウム返し、肯定する力、質問する力などの傾聴力となります。
コーチングを成功させるには、相手の能力を把握し、適切な目標設定を手伝う必要があります。目標を達成するための資源を発見し、本人が気づくように促すことも大事です。
コーチング力の最も重要な目的は、相手の考える力、問題解決力を引き出すことです。チャレンジを積極的にさせることができているか、充分考える時間を与えているかなどチェックしましょう。
1970年代に、プロのテニスコーチが「インナーゲーム」という手法を生み出しました。インナーゲームとは、質問により選手の自己学習力を高める手法です(浜田ら,2013)[1]。その後、インナーゲームは「コーチング」と名称を変え、1990年代のアメリカで積極的に導入されていきました。日本では2000年代の後半からビジネスの世界で導入されるようになってきました。一方で、コーチングの定義はやや曖昧であり、使用される場面に応じて多義的に使われています。そこで当尺度では、「コーチング」を
【対話で相手の自己表現や目標達成を促すコミュニケーション手法】
と定義して作成することとしました。
コーチング力を測る尺度としては、スポーツ場面を前提としたものが複数あります。例えば、島本ら(2015)[2]、清水ら(2018)[3]の研究があります。一方で、ビジネス場面を前提とした尺度は存在しませんでした。そこで尺度の作成にあたっては、スポーツ場面における尺度、一般書籍、関連論文を参考に、仕事の上でのコーチング力を測れるように作成しました。
現役経営者、公認心理師、臨床心理士、心理学の大学院を卒業したものが中心となり、ブレーンストーミングを行い、その後グルーピングを行いました。その結果、5つのグループに分類されました。さらに検討を加え、各因子について4つの質問を設定し、合計20問の尺度を作成しました。
- ●ラポールの形成
- こまめに声をかける
- 温かい笑顔で接する
- しっかりと挨拶をする
- 感謝の気持ちを伝える/li>
- ●傾聴力
- 話を要約して繰り返す
- 考え方を丁寧に肯定する
- 質問を適度にする
- 悩みに対して共感的に傾聴する
- ●アセスメント力
- 対象者の長所と短所を把握する
- 対象者の大事にしている価値観を把握する
- 対象者の能力の伸びシロを把握する
- 対象者の周りにあるリソースを把握する
- ●やる気を引き出すスキル
- 丁度よい難易度の課題を設定する
- 目標を自分で決めさせる
- 失敗した時は積極的に励ます
- 成功した時は一緒に喜ぶ
- ●問題解決力を育てる
- 仮説を立てさせ実行させる
- 失敗した時は原因と対策を考えさせる
- 積極的に権限を与える
- 何度もチャンスを与える
●質問項目数
5因子×各4問
●5件法
全く当てはまらない 0
当てはまらない 1
どちらともいえない 2
当てはまる 3
よく当てはまる 4
●各因子 高中低の基準
12~16 良好、8~11 やや注意、0~7 注意
●総合評価の基準
61~80点 かなり良好
48~60点 良好
35~47点 やや注意
0~34点 注意
診断結果について、それぞれのタイプごとに特徴や注意点を1,000文字前後で評価しました。文章については、先行研究や作成者の臨床経験を基に作成しました。
当診断は因子構造及び信頼性・妥当性をチェックしたものではありません。あくまで専門家としての検討を加えたものです。統計的な根拠が希薄で、研究に耐えられるレベルの尺度ではないことをご了承ください。
[1]コーチングの心理的効果に関する研究 浜田百合 庄司裕子 日本感性工学会論文誌, 2013 12巻 2号
[2]ライフスキルの獲得を促すスポーツコーチングスキル尺度の開発 島本好平 壺阪圭祐 木内敦詞 石井源信 2015 笹川スポーツ助成報告
[3]グッドコーチ育成のためのコーチング評価尺度の開発およびコーチングと選手との関連 清水智弘 榎本恭介 額賀將 荒井弘和 2018 笹川スポーツ研究助成研究成果報告書, 307-313,
*その他の参考文献
Journeys towards the professionalisation of coaching: dilemmas, dialogues and decisions along the global pathway D. Gray Published 2011 Sociology Coaching: An International Journal of Theory, Research and Practice
コーチングのすべて ― その成り立ち・流派・理論から実践の指針まで ジョセフ・オコナー (著) アンドレア・ラゲス (著) 杉井要一郎 (翻訳) 2012 英治出版