自分中心に物事を考え、合わない意見には聞く耳をもたない表現スタイルとなります。攻撃的自己表現が強い方は、他人の気持ちを考えずに、一方的に主張することが多く、人間関係でトラブルを抱えやすくなります。
非主張的自己表現は、自分の気持ちをないがしろにし、相手の気持ちを最優先にする表現スタイルです。主張するのが苦手で我慢を続けます。ストレスをためやすく、深刻な状況になると、職場うつ、適応障害と言った心の病につながることもあります。
アサーティブな自己表現は、自分と他人、お互いを尊重しながら、建設的な関係を築く表現スタイルです。アサーティブな方は、自分の意見、相手の意見を、伝えあい、よりよい関係を築く努力をしていきます。
当尺度では、3つの自己表現を土台として、9のタイプに分類をしました。各タイプにはそれぞれの特徴と改善点を解説しています。是非参考にしてください。
アサーション理論は、1949年に出版されたSalterの「条件反射療法」[1]が起源であるといわれています。1970年代になると、Emmonsが「あなたの完全な権利」[2]を出版することで、広く認知されるようになっていきました。アサーティブ力を測る尺度は、町田ら(2020)、関口ら(2019)、鈴木ら(2017)、野末ら(2001)、によって複数開発されてきました。当尺度の作成にあたっては、これらの先行研究を参考にしました。検討の結果、攻撃的自己表現、非主張的自己表現、アサーティブな自己表現の3つの因子で分析することが多いことがわかりました。当診断でも、3つのタイプを前提に作成することとしました。
公認心理師、臨床心理士、心理学の大学院を卒業したものが中心となり協議を行いました。協議の結果、攻撃的自己表現、非主張的自己表現の2因子を診断し、両者にあてはまらないタイプをアサーティブタイプと仮定しました。2因子については、公認心理師、臨床心理士、心理学の大学院を卒業したものが中心となり、ブレーンストーミングを行いました。その後、検討を加えたうえで質問項目を精査しました。短時間で診断が終わり、結果を把握できるようにするため、それぞれ10の項目を採用しました。
- ●攻撃的自己表現
- 批判をするとき口調が厳しくなる
- 議論をすると言い負かしてしまうことがある
- 相手よりも優位に立ちたいと思う
- 気がつくと相手を傷つけてしまうことがある
- 相手の気持ちを汲み取るのが苦手だ
- 相手の話を聴かない方だ
- 人の話に共感するのが苦手だ
- 指導されるのが嫌いだ
- 表情が険しい方だと思う
- ピリピリとした空気を出してしまう
- ●非主張的自己表現
- 言いたいことがあっても我慢する方だ
- 議論をするといつも負ける
- トラブルになっても話し合うことを避ける
- 卑屈になってしまうことが多い
- 怒られることが多いと感じる
- 周りの顔色をうかがう方だ
- 人の話ばかり聞いて自分の話をしない
- 基本的に受け身な方だ
- 自分の生き方を周りにゆだねる
- 嫌なことをされてもニコニコする
当尺度では、以下の9のタイプを設定しています。タイトルについては協議の上、親しみいやすい名前を付けました。
攻撃的表現‐強い・非主張的‐強い 怒り反動型
攻撃的表現‐強い・非主張的‐中程度 押しつけ型
攻撃的表現‐強い・非主張的‐低い ディベート型
攻撃的表現‐中程度・非主張的‐強い 協調型
攻撃的表現‐中程度・非主張的‐中程度 プチアサーティブ型
攻撃的表現‐中程度・非主張的‐低い 話し合い型
攻撃的表現‐低い・非主張的‐強い 非主張型
攻撃的表現‐低い・非主張的‐中程度 あったか型
攻撃的表現‐低い・非主張的‐低い アサーティブ型
診断結果について、それぞれのタイプごとに特徴や注意点を1,000文字前後で評価しました。文章については、先行研究や作成者の臨床経験を基に作成しました。
当診断は因子構造及び信頼性・妥当性をチェックしたものではありません。あくまで専門家としての検討を加えたものです。統計的な根拠が希薄で、研究に耐えられるレベルの尺度ではないことをご了承ください。
[1]Salter, A.(1949). Conditioned Reflex Therapy the direct approach to the reconstruction of personality. New York: Creative Age Press.
[2]Alberti, R.E. & Michael L. Emmons, M.L. (2008). Your Perfect Right: Assertive and Equality in Your Life and Relationships. Atascadero, CA: Impact Publishers.
[3]看護師アサーティブネス評価尺度の信頼性および妥当性の検証 町田貴絵 鈴木英子 松尾まき 瀬戸口ひとみ 北島裕子 三輪聖恵 2020 日本健康医学会雑誌 29 巻 1 号
[4]中高齢者のためのアサーティブネス自己陳述尺度の開発:信頼性および妥当性の検討利用 関口由香 長田由紀子
[5]女性の新卒看護師のアサーティブネス尺度の開発 鈴木英子 髙山裕子 丸山昭子 吾妻知美 冨田幸江 山本貴子 松尾まき 小檜山敦子 佐藤京子 2017 日本看護科学会誌 37 巻
[6]ナースのアサーション(自己表現)に関する研究(1)―ナースのアサーション(自己表現)の特徴と関連要因― 2001 野末武義,野末聖香 日精保健看会誌 10(1), 86–94. 看護管理者の日本版 Rathus
*その他の参考文献
伊波和恵 菅沼憲治 白﨑けい子 2019 聖徳大学研究紀要 聖徳大学 第30号 聖徳大学短期大学部 第52号 1-6
Assertiveness Schedule(J-RAS)の信頼性と妥当性の検証 2007 鈴木英子 齋藤深雪 丸山昭子 2007 日保健福祉会誌,14(1), 33–41